【記念講演】 絶対にあきらめない ~地域と共に存続を目指す 銚子電鉄の挑戦~ 講師 竹本 勝紀 氏 銚子電気鉄道㈱ 代表取締役
皆さんは銚子電鉄という企業をご存知でしょうか?千葉県銚子市にある私鉄で、全長6・4km、10駅しかない小さな路線です。設立して100年が経つ歴史ある鉄道ですが、事業継続の中で様々な苦難がありました。記念講演では銚子電気鉄道㈱ 代表取締役 竹本勝紀氏より、「絶対にあきらめない~地域と共に存続を目指す銚子電鉄の挑戦~」と題し、これまでの銚子電鉄(以下、銚電)の経営の奮闘をお話しいただきました。
電車屋なのに○○操業?
2005年、竹本氏は銚電の顧問税理士となりました。初めて財務諸表を見た時には、貸方と借方が逆に記帳されているなど、その体制に唖然とされたそうです。その頃から現在までを振り返り、竹本氏は「銚電は電車屋なのに自転車操業」と自虐していました。資金繰りが厳しく、事業を継続していく上で必須の車両法定検査を受けるお金すらなかったといいます。「廃線」という二文字が、頭から離れない時期だったそうです。そんな銚電を救ったのは、鉄道とは関係のない意外なものでした。
電車屋なのに○○製造?
意外なものとはズバリ「ぬれ煎餅」です。当時は密かにぬれ煎餅ブームが巻き起こっており、それに便乗して始めた事業でしたが、気づけば鉄道事業以上の利益を出すようになったそうです。
当時の経理課長が公式HPに掲載した「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」という文章が、ネット掲示板や、個人のブログなどを通じ、話題となりました。マスメディアによる報道も入り、支援をしようと注文が殺到。製造が間に合わず、注文を締め切るまでのことになったそうです。今もなお、ぬれ煎餅の製造は続いており、帝国データバンクの銚電登録は「米菓製造」になっていると竹本氏は笑いながらおっしゃっていました。
電車屋なのに○○するの?
2011年、東日本大震災およびそれに伴う福島原発事故などによる風評被害を受け、観光客が激減。またしても苦境を迎えた銚電ですが、竹本氏が社長に就任したのは翌2012年、経営難を乗り越えるため、自虐商品を開発・販売。「まずいです…経営が…」をキャッチコピーにした「まずい棒」はまたしてもネットで広まり、現在までに500万本以上売れているそうです。また、駅名のネーミングライツを販売したり、芸能人や人気コンテンツとのコラボ電車を走らせるなど、竹本氏らしい愉快な取り組みを続けています。「電車なのにそんなことまでするの?」と言われることもあるそうですが、銚電を存続させるためなら何でもやる、これは竹本氏も社員も一丸となって同じ思いなのだといいます。
終わりに
講演の終わりに、竹本氏は「銚電は私企業ではあるが、誰のものでも誰のためのものでもない。我々を必要とする人がいる限り、走り続ける」、「一度失われた鉄路は二度と戻っては来ない。鉄道の灯火を守るべく、全力を挙げて挑戦を続ける」とおっしゃっていました。鉄路とは、経営者にとっての企業そのものだと思います。参加した経営者一同、竹本氏のように、地域に根付いた企業を継続していかなければならないと決意を新たにしました。