いま、この人 4月号

今回ご紹介するのは、喜多方市で「酒バーコギク」を経営する菊田延裕さん。菊田さんの実家は長年飲み屋を営んでいましたが、彼自身は最初から家業を継ぐつもりはなく、東京で働いた後に地元へ戻りました。その後、鶴ヶ城会館の酒売り場で勤務し、日本酒やワインの魅力に惹かれるように。そこで日本酒の知識を深め、きき酒師の資格を取得。さらに地元の蔵元や酒造りの現場に関わる中で、「自分の店を持ちたい」という気持ちが芽生えたといいます。

独立までの道のり

 当初は自分の店を開く前に経験を積むため、知人の店の運営を7年間担当。元々数年の予定でしたが、コロナ禍の影響で独立のタイミングが遅れました。しかし、母親の体調の変化もあり、実家を改装して店を開くことを決意。令和6年5月、ついに「酒バーコギク」をオープンしました。
 「お酒を楽しむための空間づくりを大切にしています。料理をメインとする居酒屋とは違い、少量でもこだわりのお酒を味わえる場にしたかった。日本酒やワインを気軽に楽しめる場所にすることで、お酒の魅力をより多くの人に伝えたいと思っています」と菊田さん。

お酒と地域をつなぐ活動

菊田さんは、お店での提供だけでなく、日本酒やワインを楽しむイベントも企画。特に、会津の地酒や長野のワインに注目し、試飲会や勉強会を定期的に開催しています。イベントには蔵元やワイナリーの関係者を招き、お酒に関する知識を深める機会を提供。これにより参加者がお酒の背景を理解し、より一層楽しめるよう工夫しています。
 「日本酒の消費量は減少していますが、若い世代にも興味を持ってもらえるような提案をしていきたい。ワインの世界では、若手の醸造家も増えており、新しい流れが生まれています。そうした動きも取り入れながら、お酒の魅力を発信していきたいですね」
 店では、福島県喜多方市や会津地方の銘酒を取り揃えています。特に、十四代、写楽、飛露喜といった人気銘柄もラインナップに加え、日本酒好きにはたまらない空間となっています。また、お酒に合う手作りの〝あて〞にもこだわり、お酒の味わいをさらに引き立てます。

今後の目標

菊田さんは今後、ソムリエ資格の取得を目指しています。すでに利き酒師の資格を持っていますが、ワインの知識を深めることで、お店での提案の幅を広げたいと考えています。また、ITの活用にも力を入れ、Goog leマップやSNSを活用した情報発信にも挑戦中。また同友会にも積極的に参加し、経営者としての学びを深めています。
 「異業種の方々と交流することで、自分の店だけでは得られない視点を持つことができる。特に、飲食業界の後継者問題や地域の活性化について考える機会が増えました」と語ります。 「お酒の楽しみ方は時代とともに変わりますが、本当に美味しいお酒を、楽しく飲める場を提供することは変わらないと思っています」
 お酒を楽しむことは、単なる飲食ではなく、その土地の文化や歴史を知ることにもつながります。菊田さんの挑戦は続きます。お店での一杯が、新たな出会いと文化を生み出す場になることを期待しています。

J.S.A. SAKE DIPLOMA
(酒ディプロマ)資格を取得