いま、この人 10月号
べては地域の笑顔のために
㈱かねまん本舗 代表取締役社長
遠藤 貴司 さん(いわき支部)
2025年11月14日に開催される「第49回全県企業家フォーラム」。その実行委員長を務めるのは、いわき支部の遠藤貴司さんです。肩肘張らず、自然体で語るその姿からは、経営者としての誠実さと、地域への深い思いがにじみ出ていました。
かまぼこを単なる「食品」ではなく「文化」として発信
創業53年の老舗である㈱かねまん本舗は、1972年に「カネマン鶴屋蒲鉾店」として創業。以来、「創作かまぼこ」を主軸に直売スタイルを貫き、多くの人々に親しまれてきました。特徴は、伝統的な紅白かまぼこにとどまらない、多彩な「創作かまぼこ」を展開している点。無添加製法にこだわり約30種類を揃え、焼き色が美しくケーキのような「シーフードケーキ」は特に人気です。地域の食文化を新しい形で発信しています。二代目の遠藤貴司さんは、伝統の技を受け継ぎながらも、時代に合わせた挑戦を続けています。震災後には「食を通じて地域を元気にしたい」との思いから、店舗を〝人が集う場〟へと再構築。地元高校生やクリエイターとのコラボレーションを進め、かまぼこを単なる食品ではなく「文化」として発信してきました。

15年越し、「報告者」から「実行委員長」へ
同友会には2003年に入会。最初は例会に一度参加したのみで距離を置いていましたが、2010年、いわきで開催された経営者交流大会において見学分科会を担当したことが転機となりました。報告者として仲間の前で発表した経験が、自身の学びを深め、活動に本格的に向き合うきっかけとなりました。そして今年、遠藤さんは第49回全県企業家フォーラムで実行委員長を務めます。大会スローガンは「未来へつなぐ経営者の挑戦 ~減少社会のその先へ~」。少子高齢化による人口減少や地域の過疎化といった社会課題が迫る中で、経営者がいかに備え、未来へとつなげていくかを問いかける内容です。「自分もかつて同友会の活動を通じて多くの刺激を受けてきました。今度は自分がその〝場〟をつくる番」と遠藤さん。記念講演や6つの分科会を通じて世代や業種を超えた対話を生み、持続可能な地域になるための学びの機会を目指しています。

地域人としての使命感
フォーラムの準備にあたっては、大会コンセプト作成から内容の企画立案、全県への広報活動など多忙を極めますが、「一人ひとりが希望を持ち、未来を描けるような時間にしたい」と語る遠藤さんの姿には、経営者としてだけでなく地域人としての強い使命感がにじみます。プライベートでは3人の娘の父であり、休日にはゴルフやソフトボールでリフレッシュ。「スポーツをしていると頭が空っぽになり、新しいアイデアが湧いてくる」と笑う遠藤さんの姿は、仕事と家庭、地域活動をバランスよく両立する現代的な経営者像そのものです。

次代を担う、経営者へ希望をつなぐ
「経営者は孤独だけど、孤独であり続ける必要はない」︱︱その言葉には、同友会活動を通じて得た仲間とのつながりへの感謝が込められています。半世紀にわたり食を通して地域に希望を届けてきた遠藤さん。今度は全県企業家フォーラムという舞台で、次代を担う経営者たちの希望をつなぐ役割を果たそうとしています。